保護犬の里親になるとトラウマのある犬の心のケアをどうしたらいいのか思い悩むこともあると思います。
飼い主に捨てられた犬、繁殖犬として狭いゲージに入れら続けた犬、様々な境遇で生まれ育ち捨てられた保護犬たち。保護犬の以前の境遇を知り、犬と一緒に傷つく里親さんもいるでしょう。
そんな保護犬のトラウマや心の癒しについてまとめました。
トラウマと長期記憶・短期記憶の関係
人間にも犬にも長期記憶と短期記憶があります。
一度自転車の乗り方を覚えれば幾つになっても乗れるのは長期記憶のおかげ。1時間前にご飯食べたなぁは短期記憶。
犬の場合、短期記憶は10秒ほど。30秒前にしたソファーのおしっこは覚えていません。ですが何年も一緒に過ごした飼い主さんや何十回何百回もトレーニングしたマテやフセは長期記憶に記憶されるのでいつまでも覚えています。
では元飼い主さんの虐待や捨てられたことを覚えているのでしょうか?
生まれてからずっと一緒にいた元飼い主さんのことは長期記憶で覚えています。また、その飼い主さんに日常的にされていたことも覚えているでしょう。
科学的研究を見つけられなかったのですが、保護団体の人が何度も保護犬に会っていても、里親さんに引き取られて数年後に再開して忘れられていると言うのを聞いたことがあります。でも数ヶ月一緒に過ごした預かりさんは覚えているようです。
だとすると、人間同様に一緒にいる時間やショックの大きさで心の傷の深さは違うでしょう。
トラウマ解消には時間のかかる保護犬も短い保護犬もいる
保護犬によって心の傷が浅いのか深いのか差がありますし、一概に保護犬=トラウマがあるわけではないようです。
私(Taka)には2頭の保護犬マリアとカイがいます。マリアは2回出産経験のある元野犬。仔犬とは2度とも引き離されました。カイは元噛み犬で元猟犬。人を見ると本気で噛みつこうとしていました。
マリアは保健所に収容され、子犬と引き離されたのですから人間不信になって当然です。そんなマリア、3ヶ月ほどで尻尾をフリっとする時が。一年後にはキューキューと甘えようになりました。私以外の人にも恐々ですが近づいたり、可愛がってくれる人に尻尾をふって喜びます。トラウマがなくなったわけでは無いでしょうが、今はマリアのトラウマを気にすることはありません。
カイは噛み犬のために殺処分対象だった保護犬です。保健所には6ヶ月収容されていました。殺処分される恐怖もあったのかもしれませんが、外に出られないストレスから噛み犬になったのではないか、と一緒にいると思います。そんなカイ、1ヶ月もせずに私にもドッグトレーナーさんにも懐いてくれました。トラウマは殆ど無いようです。
トラウマとして過剰に考えない
家族として迎えた保護犬にウーッされたり後ずさりされると「以前の飼い主に何かされて怖いのかな?トラウマがあるのかな?」と思うことでしょう。時には保護犬の心の傷に触れてしまい噛むこともあるでしょう。人間同様に犬もまた心に傷を負いますし、哀しすぎてショックを受けてションボリすることもあります。
保護犬が何をしても常に平常心で、ここにいて安心だよという思いを伝えることが何よりも大事です。思いを押し付けるでもなく、伝えることを怖がるでもなく、安心だよとわかってもらうこと。そういう環境を作ってあげて、安心だと感じているタイミングを見計らって人の手の温かさや優しさを肌で伝えてあげることです。
犬は今を生きているため、人間よりもずっと癒えるのが早いようです。保護犬のビフォア・アフターを見るとわかりますが1ヶ月で表情が柔らかくなる犬がたくさんいます。
人間が何十年もトラウマを引きずるのに対し、犬たちは数日、数ヶ月で癒え、嬉しそうに里親さんに近づいていきます。犬によってはもっと長い時間がかかるかもしれませんが、「この犬はトラウマがあるから」という気持ちで接するよりも、これはこの犬の個性・気質だと思って接するくらいが丁度良いでしょう。
引き取って直ぐの保護犬は「この人を信用していいのかな?新しい家族なのかな?安心していいのかな?」と新しい環境に不安を持っていて当然です。お互いに慣れていないのですからしばらくはお見合い、顔合わせだと思って見守りましょう。
そしてトラウマがあるかもと過剰に気遣わずに「大丈夫だよ。ここが新しいお家、新しい家族だよ。安心していいよ。」と伝えてあげましょう。
トラウマ解消!まずは安心できる居場所づくりを
保護犬を引き取ってから環境や里親さんになれるまで数カ月かかります。まずは安心できる環境づくりを心がけましょう。
1ヶ月くらいは環境変化で保護犬にも里親さんにもストレスが多い時期。保護犬のトラウマを気にし過ぎることなく、犬の性格や個性を知ることやトライアンドエラーで居心地のいい居場所作りをして行きましょう。
2ヶ月、3ヶ月経つと生活パターンに慣れお互いの心が近づいて来る時期です。変わらぬ愛情を注ぎながらルールも伝えて行きましょう。トラウマがあるからと甘やかすだけだと後々問題行動につながるかもしれません。
元野犬マリアと元ガルガル犬カイからのメッセージ
マリアから
Taka:「マリア、犬にもトラウマ(心の深い傷)ってあるの?」
マリア:はい、ありますよ。哀しい出来事を忘れることはありません。でも、お父さんと一緒に幸せに暮らせている今が幸せです。
Taka:「仔犬のことはどう思っているの?」
マリア:なんとなくですが仔どもたちの今の様子がわかります。私たち犬のネットワーク(集合意識)で仔どもたちと繋がりを感じています。
Taka:「会えなくて寂しくないの?」
マリア:私たちは今を生きています。寂しい気持ちがないわけではありませんが、寂しさを生きたりしません。目の前にあるご飯やおやつ、臭いや音、お父さんの温もりが幸せです。
カイから
Taka:「カイ、犬にトラウマ(心の深い傷)ってあるの?」
カイ:トラウマって何?
Taka:「保健所に捕まって檻に入れられた時の怖さとか」
カイ:あぁ、うん、あるよ。あるけどもう殆ど忘れちゃった。
Taka:「なんか軽いね?死にかけたんだよ?」
カイ:そうなんだね。まぁ、死ぬのかなと思ったけど生きてるしね。それよりも「外だせや〜!走らせろ!匂い嗅がせろコラ〜!」って気持ちを覚えてる。
Taka:「今と一緒だね」
カイ:そうそう。父ちゃん、もっと走らせろ〜!匂い嗅がせろ〜!
まとめ
劣悪な環境で飼われていた犬、老犬だからと保健所に持ち込まれた犬。心に傷を負ってトラウマを抱える保護犬もいるでしょう。心のケアが必要な保護犬もいるでしょう。でも過剰に気せずに目の前のワンコが居心地良く過ごせる環境と好き!と言う気持ちを伝え続けましょう。
犬はいまを生き続けています。いま幸せ。いま嬉しい。いま楽しい。いま美味しい。いまを幸せと喜びでたくさん満たしてあげることで犬の想い出は幸せで満ちたものになるでしょう。